秦良玉評伝 明から清へと王朝が交替する時期に活躍した実在の人物を採り上げた作品。小説というよりは評伝という感触がある。 近代小説のように登場人物の内面を描写せず、その行動を追うことでイマジネーションをかき立てるという手法を用いているので、慣れていない人にはとっつきにくいかもしれないが、内面描写が延々続く近代小説の押しつけがましさに疲れた時にはこのような距離感は心地よい。長江上流を旅行する前に読めば旅情もかきたてられるのではないか。
外に女真族の脅威、内に反乱の恐怖をかかえる斜陽の大国・明。その動乱の世に、荒ぶる男たちを蹴散らして、戦場を駆け抜けるひとりの女がいた。名は秦良玉。古今東西並ぶもののない女将軍である。幼少の頃より文武両道に秀でた良玉は、夫の死後、幼い息子にかわって石〓宣撫使の職を継ぎ、理不尽な権力に翻弄されながらも、国家と戦場にその一生を捧げるのだった。