弱者の意地と負け方を知るいつも宮城谷作品を読むと思うことですが、前半部分の主人公が世に認められるまでがすばらしいです。よき師や友との出会い、自分の道をみつけ、命をかけて従う部下たちを得て、絶対的危機の中で、自分の才能が花開く瞬間。時代小説というと、若者は敬遠しがちですが、偏見を持たずにぜひ。自分の道を探している人は、この本にはきっと勇気づけられるはず。また、この作品では、小国の将軍という立場の、楽毅の弱者としての生き方を学ぶことが多かったです。どう退却するか、どう負けるのか。どう認められるのか。権力者とはどういうものなのか。妬まれたらどうするか。戦争を避けるには。大国とつきあうには。などなど、ここのところの日本社会にとって学ぶモノが大きいなと思いました。もちろん楽毅の波瀾万丈の人生は、なにも考えずに楽しんでもOK。読みごたえたっぷりです。