とてもいいんですけど...宮城谷さんの作品の傾向として、その時代の"ヒーロー"が成長していくさまを描いていると感じていたので、「呂不韋」できたときはびっくりもしましたが、大いに期待しました。大方の歴史ものでは、呂不韋はどちらかというとヒーローとは言いがたく、終わりもよくない人という位置づけのような感じで、それを生き生きと描き、それこそこれまでの認識を覆す勢いがありました。...が、なぜか5巻目に突入したところで、いきなり失速しました。話の展開が突然速くなり、息子との対決というクライマックスが淡白で、盛り上がりに欠けたまま終わってしまいました。それでも他に呂不韋についての小説はほとんどなく、あっても秦王政の視点からのものばかりなので、戦国末期を堪能したい方は是非読んでみてください。
秦の始皇帝の父ともいわれる呂不韋。一商人から宰相にまでのぼりつめたその波瀾の生涯を描く。多くの食客を抱え、『呂氏春秋』を編んだということ以外、多くの謎に包まれた呂不韋に、澄明な筆致で生命を与え、みごとな人物像を作り上げた、六年半に及ぶ大作。第一巻春風篇では、呂不韋の少年時代を描く。