時代を意識した独特の歴史観最初に陳舜臣の「実録アヘン戦争」を読んでいたので歴史の流れはわかっていた。その上で小説としてのアヘン戦争を作家がどう捉えているのかを探しながら読んだ。実在の人物である林則徐を主人公にするのではなく、架空の人物「連維材」という商人を取り巻く人々としてストーリーが展開する。この手法は、「秘本三国志」でも取り入れられた陳舜臣独自の味を出している。数多くの登場人物が出てくるがそれぞれのキャラクターの描き分けが見事である。麻薬「阿片」と名がついている世界史史上でも特異なこの戦争をの背景には、衰退してゆく腐りきった清王朝の転げ落ちて行く様が見事に描かれている。もっともどの戦争は理不尽なもので悲劇しか生まないものであるのだろうけれども。汲めども尽きぬ興味深い中国史の中でも最後の清王朝の末期、21世紀初頭の今日でも学ぶべき点が多いのではないだろうか。そう思って読了した。