偉大なり宮城谷師 中巻で、主人公重耳の師である卜偃が、占いの結果についてこう説明するくだりがある。 「・・・晋は辺土の侯国で、国が乱れれば、必ず大国の干渉や指導を受けることになる」ゆえ、国が乱れても滅亡はない、と。鈍いわたくしはこれが何を意味するのか長い間気付かなかった。 ところが、「老人や女性などIQの低い層」に郵政民営化を宣伝し、党首討論では野党からの質問を無視し続け、反対派には刺客と称して政治の素人女性を送り込む、などと有権者をバカにし続けた党が何と憲法改正に必要な議席数を確保し大勝してしまった。 ついに日本国民は、自分たちがバカにされ切っていることすら、楽しむようになってしまったのか、と意気消沈していたわたくしに、この宮城谷師の何気ない一文が響いたのである。そうか、この「大国に挟まれた辺土の侯国」とは、晋ではない、わが国のことか・・・ ヘタに改憲しようとしても、米帝と中帝が必ずわが国に「教育的指導」をしてくるに違いない。この一文はまさにそのことを示唆しているのだ、ということが了解されたのである。 宮城谷師、偉大なり。 もちろん、ふつうの歴史小説として一級品であることも付け加えるまでもないでしょう。「三国志」の完成が待ち遠しいですね。
黄土高原の小国曲沃(きょくよく)の君主は、器宇壮大で、野心的な称(しょう)であった。周王室が弱体化し、東方に斉が、南方に楚が力を伸ばし、天下の経営が変化する中で、したたかな称は本国翼(よく)を滅ぼして、晋を統一したが……。広漠たる大地にくり広げられる激しい戦闘、消長する幾多の国ぐに。躍動感溢れる長編歴史小説全3巻。。