“アンリは鞘を握りしめる” いつの時代、どこの国でも社会体制が“ドラスティックな変化”を遂げるとき、混乱と流血は避けられず、若い命は散らされてきた・・・。 「フランス革命」。ヨーロッパ全土に渡ってが築かれてきた強固な“支配体制”が覆されたこの未曾有の出来事は、現代人からみれば「革新」のそれに違いないだろう。 しかし、急激な革新は真の意味を伴わず、状況は身勝手に暴走する。 物語の核となるーヴァンデの叛乱ーは、まさに革命の名の下に暴走した、あるいは否がおうにもさせられた人間達の悲劇ではないだろうか。 「アンリは鞘を握りしめる」 身分の違いこそはあれ、「対等」の存在だったニコラを進んで遠ざけざるを得なかった青年貴族アンリ。 旧社会の恩恵に預かり20年の命と名誉を与えられてきたがゆえに発するアンリの自己抑制と、それと相反する人間としての本能的悲しみ=愛すべき友との離反=がひしひしと伝わってくる言葉です。第一部第二章のラストで4回も繰り返しでてくることで、この若者の悲劇性が一層強められています。“革命”が発起したこで定まった彼の運命に涙せずにはいられない、とても印象的で大好きなシーンです。