いつ読んでも フランス革命やルイ16世、マリー・アントワネットに関するメディアは、それこそ星の数ほどある。「ベルばら」〜いろいろと目にしてきた。できはいいものとわるいもの(何をもってそういうかは置いておいて)があると思う。ただ、扱われる数が多いので、少し食傷気味。「誰が書いたか」によって、つまり「料理の仕方によって」面白くもつまらなくもなる代物である。これも、かなりなファンの友人が「一気に読んじゃった」といわなければ決して手にとることはなかったでしょう。手にとってから読むまでの間、これほどわくわくした本は久しぶりでした。マダム・ロワイヤルなるアントワネットの娘が、彼女の母親の最後の様子を書き記した弁護士の随想録を、悪名高いプレイボーイ(死語)司祭と娼婦に朗読させるという趣向である。それによって臨場感がいや増し、アントワネットの人間像が浮かび上がってくる。ツワイクの言うとおり、その平凡性ゆえに国家を統治する一国の后の荷が重かったのだと片付けることはあたっているのかもしれない。でも、彼女には彼女の生きた社会でのルールがあり、彼女はそこで生きるのに精一杯だったのだろう。なににせよ、架空の人物、司祭と娼婦の場面が当時の風俗を語っていてなかなか興味深い。マダムとの関係の必然性などは?だが、当時の興味も、現代の興味も、人間の営みにさして変わりはないのだと感じさせてくれた。著者の作品ははじめて読んだ。ヨーロッパの歴史に造詣が深く、とても信頼が置ける。かつて「ベルばら」を教科書代わりとしたように、著者の作品で教科書では味わえない歴史の面白さを感じることができた。歴史は人間のドラマだからだ。