暗殺者の心理とは? ロレンザッチヨはなぜ、いとこにして君主たるアレッサンドロを殺したのか?友人づきあいをし、いかがわしい遊びにも興じた中ではなかったのか?彼は亡命したフランスでも人々から好奇な視線で見つめられるが、肝心の『何故、殺したのか……』という問いにはまったくまじめに返事をしようとしない バロア王朝が君臨するフランス。フランソワ一世の寵姫、エタンプ夫人は宮廷でも最大の権力を誇っている。その彼女と派手にやりあうのは王妃ではなく、王太子アンリがこよなく愛する老年のディアーヌ・ポワチエ。 ロレンザッチヨと同家の出身の若い王太子妃カトリーヌは、まったく影が薄い。しかし彼女はロレンザッチヨの話を聞きつつ、自分も密かに彼に習わんと心の底で企んでいる。 聡いデ???アーヌはそのあたりのことを感知し、ロレンザッチヨに近づく。……この年代が異なる女三人が美青年のロレンザッチヨと関わっていく。最終的に王太子妃カトリーヌが彼の回想録の手伝いをするという形になるのだが、さて暗殺者が語る彼のこしかたとは?『なぜ殺したのか?』犯罪心理学に詳しい藤本ひとみ氏が描いた歴史小説。 少年犯罪や薄気味悪い事件が続く現代にも通じるものもあるのかもしれない。
16世紀ヨーロッパを震撼させたフィレンツェ大公暗殺事件―刺客の手を逃れてフランス宮廷に身を隠した暗殺者ロレンザッチョは、王太子妃カトリーヌ・ドゥ・メディシスの求めに応じて、自らの過去を語り始めた。名門に生まれ、将来を嘱望されて育ち、成功を疑わなかった美貌の青年貴族は、いかにして挫折し殺人者になったのか。英雄になりたかった青年の絶望と、心の叫びを綴る。