愛されない男の執念 従来、立身出世の代表として日本人に愛され続けてきた豊臣秀吉を「女に愛されない男」という視点から描ききった怪著。 猿面で貧弱な体躯、そして素寒貧というどうしようもない状況から、信長の妹お市の方への「執念」をバネにして、秀吉は出生街道を駆け抜けます。その間、上司・同僚・ライバル・部下達を騙し、落としいれ、破滅させながら。 しかし、そうした成功を成し遂げながらも、彼はその醜悪な容貌のために誰からも(特に彼の愛してやまなかった女性から)愛され、受け入れられることはありません。妻ねねも、そしてその後彼が力づくで手に入れた女性も、彼を男として愛することはありませんでした。 増幅した劣等感をバネに、秀吉はお市の方を得るためにさらなる高みを目指し、ついに主君・織田信長を消し去るべく本能寺の変を計画しました。明智光秀の周囲の人間関係を少しづつ悪化させ、彼を精神的に追い込み、ついに謀反の決意をさせるまでの記述は、秀吉の恐るべき悪意を描ききって読む者を慄然とさせます。 上巻では、光秀を討った秀吉が清洲会議を開催するところまでです。その後、天下人となった秀吉は、ついに自分の欲望をかなえることができたのでしょうか?それは下巻で語られます。