歴史の流れは良くわかります。明治維新直後の混沌とした時代の中、誰がどう考えて生きたかが筆者の想像を膨らませ、完成している。しかし、もともと長編にすべき、という考えがあったのかと思ってしまうほど、背景の描写が多い。また、近代国家を目指す日本を全体的に暗いイメージにしているところは、積極的に人に薦められない。とはいえ、歴史教科書では数行で終えてしまう部分に、深く、緻密に表現した点は読んでいて圧倒される。
明治維新とともに出発した新しい政府は、内外に深刻な問題を抱え絶えず分裂の危機を孕んでいた。明治六年、長い間くすぶり続けていた不満が爆発した。西郷隆盛が主唱した「征韓論」は、国の存亡を賭けた抗争にまで沸騰してゆく。征韓論から、西南戦争の結末まで新生日本を根底からゆさぶった、激動の時代を描く長篇小説全十冊。