周辺人物の描き方が秀逸
主人公である平清盛もさることながら、
その周りを固め、あるいは通り過ぎ去っていく人物達の描写が実に丹念です。
清盛の父忠盛の後妻である池の禅尼が若年期の清盛の思慮足りない行動を、
清盛を傷つけぬよう、穏やかにしかし毅然とたしなめるエピソードをもって、
(それが事実であったかどうかは別として)
なぜ後年に清盛が義母の頼朝助命嘆願を無下にできなかったかを語ります。
ただの義理の親子関係がなせるわざではなく、その女性が然るべき人物だったからです。
そのほか、武力面で清盛最大最強の敵であった源義朝の人物像、
清盛が嫡子重盛と義朝の長子義平とを比べて、その器量の違いに嘆息を漏らす親心、
一族郎党に仲良く囲まれていながらも唯の一人も頼みにできない清盛の孤独感など、
読みどころ満載の第一巻です。