ローマ人の工夫ローマ人の物語、文庫版第3巻では、カルタゴとの戦争を描く。第一次ポエニ戦役だ。アフリカ大陸北部を本拠とする強国カルタゴと、かなり大きく成長してきたローマ。まずは、シチリア島の攻防である。なぜ、強大なカルタゴと全面戦争に突入するに至ったのか、そして、シチリアをめぐる戦いは、どう進んだのか、わかりやすく書かれている。急遽、即席の海軍をつくることになったローマの奮闘ぶりがおもしろい。「陣形も組めてないじゃん」と海上でカルタゴに笑われるありさま。でも、ローマは、「海でまともにやりあったら負けるから、相手の船に乗り移って、陸上の戦いみたいにしてしまえばいい」と考え・・・大嵐で遭難したり、カルタゴ軍の象にふみつぶされたり、とぼろぼろになっても、それに着実に対処していく様子が見もの。ローマは、自分たちのダメだったところなどを、ちゃんと克服していくのだ。自分たちのやり方を確立しつつ、状況に柔軟に対応したからこそ、勝てたのではないか?ローマとカルタゴの一進一退がおもしろく読めて、塩野さんのローマへの愛情も感じられる本。字も大きく読みやすい。